増改築のメリット・デメリット
築年数の古い建物になってくると、リフォームもしくは建て替えを考えなければならない時期が必ず訪れます。増築・改築によってまだまだ住み続けられる場合もありますし、逆に建て替えた方がお得な場合もあります。建て替えと増改築、双方のメリット・デメリットをきちんと知って、どちらが適切な選択であるのかを判断することが大切です。
今住んでいる家を増築・改築した方が得なのか、それとも建て替えた方が得なのか。これを予算だけで判断するのは考え物です。増改築した場合と建て替えた場合の耐用年数や、どんな住まいにしたいのかといった家族の要望なども含め、総合的に検討した上で決めることが重要です。
また、築年数が古いからと言って、建て替えるのがベストな選択であるとは一概には言えません。古い建物であっても、しっかりと作られている家屋は基本的に頑丈ですし、定期的なメンテナンスによって長く住み続けることも十分可能だからです。反対に、それほど築年数が古くない建物であっても、今後の家族構成やライフスタイルの変化に伴って、間取りや敷地などの状況が大きく変わる可能性があれば、建て替えた方がお得な場合もあります。状況によっては、建て替えた場合よりも増改築の方がお金がかかってしまうこともあります。
増改築と建て替えの双方のメリットとデメリットを表にまとめてみました。
メリット | デメリット | |
増築・改築 | ●住みながらの工事が可能 ●10㎡以内の増築であれば確認申請が不要 ●一般的には建て替えよりもコストが少ない | ●増改築した箇所と古い箇所との接合部に狂いが発生することがある ●増築の場合は既存建物との間に耐久性の差が生じる ●制約が多いため希望通りのプランを立てられないことがある ●長い目で見ると建て替えた場合よりも割高である |
建て替え | ●家屋全体を新しく作り替えられる ●自由なプランで設計できる ●増改築するよりも坪あたりの単価が安い ●耐用年数を気にする必要がない | ●建て替え中は仮住まいが必要 ●解体費用や廃棄物処理費用が別途かかる ●増改築よりも総費用が高くなる ●建ぺい率の関係で既存建物よりも床面積が小さくなる可能性がある |
コスト面での比較
コスト面を考えた場合、基礎や土台、柱などの躯体に激しい劣化が無い限りは、建て替えよりも増改築した方が安上がりで済みます。ただし、劣化が激しい場合は大掛かりな補修が必要となって費用がかさむ可能性もありますので、躯体の劣化状況によって条件が変わってきます。
一方、建て替えの場合は、新居の建築費のほかに、既存建物の解体費用が余計にかかることになります。また、増改築に比べて解体時に発生する廃棄物の量も多くなるため、その処分費用も計算に入れなければなりません。また、増改築の場合は住みながらの工事が可能な場合が多いですが、建て替えの場合は仮住まいの確保や引越し費用などの出費が避けられなくなりますので、単純に総費用だけを見ると、一般的には増改築の方が有利であると言えます。
しかし、増改築の場合は、基本的に既存の壁や屋根などを壊しながら新しいものを造っていくという工事になりますので、工事単価が割高となってしまうケースも多々あります。さらに、予算の関係で部分的なリフォームを繰り返すような場合は費用も割高となりますし、一度リフォームした箇所も定期的なメンテナンスが必要となってきます。それに比べると、現在の建築基準で建てられた新しい建物は、耐用年数や耐震性なども格段に向上していますので、長期的なトータルコストで考えたら建て替えた方がお得かもしれません。
増改築の構造的な制限
増改築の場合、建物の構造的な問題によって、希望するリフォームプランが立てられないケースもあります。また、躯体の劣化が激しかったり、耐震性に問題がある場合は補強工事が必要となり、付帯する工事も増えてしまう可能性があります。さらに、どれだけお金をかけて補強しても、新築と同じような強さにすることは難しいという問題があります。また、水廻りの移設や廊下の拡張など、構造的な間取り変更を伴う工事になると、建て替えと遜色ない費用がかかってしまうケースもあります。
法規制による建て替えや増改築の制限
法律の改正によって、以前に比べると建て替えに制限が生じるケースが多くなってきました。例えば、建築基準法の改正などによって土地の建ぺい率が変わってしまうと、建て替えを行う場合は前の家よりも床面積を小さくしなければならないといった規制を受ける可能性があります。このほか、建築基準法で規定された道路に接しない場所にある建物は建て替えが出来ないなど、土地によってはかなり規制が厳しくなっています。また、増改築の場合においても、構造部分から変更するような大規模なリフォームでは確認申請を行うことが義務付けられています。ですので、建て替えや増改築を検討される場合は、今住んでいる土地にどのような規制がかけられているのか、事前に調査しておくことが必要です。
建ぺい率と容積率による制限
建ぺい率とは敷地面積に対する1階部分の床面積のことで、容積率は敷地面積に対する延べ床面積(全階の床面積を合わせた総床面積)を指します。この建ぺい率と容積率には地域ごとに上限が決められていて、既存建物が上限に達している場合は増築が認められないケースもあります。
建物の高さによる制限
建築物には、北側斜線制限や日影制限といった規制が設けられています。これは、その建築物の高さが周辺住宅などの日当たり状況に大きな影響を及ぼさないことを目的とした規制です。そのため、建て替えや増改築などを行う場合には、屋根の高さや形状などにも十分注意しなければなりません。
増築における確認申請の義務
床面積の変更が10㎡以上におよぶ場合の増築や、防火地域および準防火地域に指定されている地域で増築を行う場合は、管轄の役所に対して確認申請を行うことが法律によって義務付けられています。