大規模改修工事の相場
大規模改修工事の費用は、一世帯あたり80万~100万円が相場と言われています。しかし、この金額はあくまでも目安に過ぎず、実際にはマンションの規模や、また劣化状態などによっても変わってきます。正確な見積りを出すためには、現場での念入りな診断と、工事ごとの原価を算出することが必要となってきます。
管理会社主導で大規模改修工事を行う場合、管理会社の利益をはじめ、設計士や施工会社などいくつものマージンがかかってくるため、必要以上に費用がかさんでしまいます。ですから、修繕費用を少しでも抑えたいのであれば、管理組合主導で改修工事を計画し、マンション管理士や設計士、あるいは施工業者を独自に選んだ方が良いでしょう。マンションの大規模改修工事で大切なことは、施工の質もさることながら、長年積み立てたお金を有効に使うために、いかに無駄を省けるかということも重要なポイントです。
費用はマンションの規模によって決まる
大規模改修工事の費用は、建物の劣化状態や発注方法によっても変わってきますが、一般的にはマンションの規模によっておおよその金額が決まることになります。大体の目安ですが、100戸程度の規模のマンションの場合、一戸あたり70~80万円ほどの負担になると言われています。200戸規模のマンションでは約60~70万円、300戸規模では約50~60万円ほどが相場となっています。反対に、戸数が少ないマンションほど一戸あたりの負担額は大きくなってしまいます。50戸以下のマンションだと約50~60万円、30戸以下では約90~100万円、そして20戸以下の小規模マンションでは100万円以上かかってしまうとされています。
このように、住んでいるマンションの規模によって大規模改修工事の費用も違ってきます。30戸程度の小規模マンションに居住しているの場合、300戸規模のマンションの住人に比べると、実に倍近くの修繕費用を負担することになってしまいます。小規模マンションでは、修繕費用の積み立ての問題だけでなく、一般管理費も額が少ないことから、なかなか大規模マンションのようには予算を作れないというのが現実です。その上、戸数に対して供用部分が占める面積が大きいため、必要以上に工事費用がかかってしまいがちです。ですから、改修工事の内容や、改修の周期などを上手に調整することで経費削減を図る必要が出てきます。
建て替えより大規模改修工事
改修工事が必要なほど劣化したマンションを新しく建て替えるという選択肢もありますが、同じ規模のマンションに建て替える場合、一戸当たりおよそ2000万円もの費用がかかってしまいます。その際、以前より容積率の高いマンションに建て替えて戸数を増やし、増えた分を販売することで一戸当たりにかかる費用を抑えるのも一つの方法ではあります。例えば、容積率が2倍のマンションに建て替えたとしたら、一戸当たりの相場は約500万~1000万円、容積率が3倍なら費用をゼロに近づけることも可能です。ただし、容積率を増やすには、日照権や日影規制など様々な法的問題をクリアすることが前提となってきます。日照権とは、新しく高層建築物が建てられる際に近隣住民の日当たりを守るための権利で、特に住宅地の場合などは以前と同じ高さのマンションですら建設が認められないケースもあるほどで、条件をクリアすることは非常に難しくなっているのが現実です。そのため、容積率をアップしてマンションを建て替えることは実現が相当難しいと言えます。
そこで、建て替えよりも大規模改修工事という選択が現実的になってくるのです。もちろん、改修工事には相応の費用が必要となり、しかも定期的に行わなければなりませ。それでも、たとえ10年ごとに平均的な費用で大規模改修工事を実施したとしても、同じ容積率のマンションに建て替えるよりはずっと少ない費用に抑えることが出来ます。容積率を増やせるような恵まれた環境に建っている場合は建て替えた方が得かもしれませんが、そうでない場合は建て替えるよりも大規模改修工事を実施することをお勧めします。