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耐震工事の必要性

地震大国の日本では、古くから大地震による家屋倒壊などの被害に度々見舞われてきました。また、近年は構造計算書の偽造が発覚する事件などもあり、建物の安全性や信頼性が大きく揺らいでいます。近い将来の発生が懸念されている大地震に対する恐怖心を少しでも取り除くためには、家屋の耐震補強を行って万全の備えをとっておくことが大切です。

地震による家屋倒壊の被害

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、津波による甚大な被害に襲われましたが、1995年1月17日に発生した直下型の阪神・淡路大震災では、家屋の倒壊による犠牲者が圧倒的に多かったと言われています。阪神・淡路大震災では、一部損壊を含めると実に50万軒以上の住宅が全壊または半壊という被害を受けました。この時の大きな特徴は、築年数の古い住宅ほど被害の割合が大きかったという点です。昭和56年の法律改正によって新耐震法が制定され、壁量計算などが義務化されましたが、接合部など基準が曖昧な部分が多くあるのも事実です。また、それ以前に建てられた住宅は法律による耐震基準が適用されていないため、地震による倒壊の危険性が高いと考えられています。倒壊の原因としては、耐力壁が不足していることや、構造材の強度不足、シロアリによって柱などが腐朽していることなどが挙げられます。その原因を耐震診断によって明らかにし、耐震性が弱いと判断された場合は補強工事を行う必要があります。

予算に応じた耐震工事

本格的な耐震工事を行うには相当な費用を要するため、予算の壁に阻まれて耐震工事を断念してしまう方も多いようです。しかし、耐震補強をしたかしないかによって、大地震の際に生死を分けることになるかもしれないのですから、やはり最低限の耐震改修だけでも行っておくべきです。比較的新しく建てられた家屋の場合なら、耐震ではなく「制振」のみで大丈夫な場合もあります。制震工法は、耐震という観点から見ると決して評価の高い工法ではありませんが、地震の振れの力を吸収する効果があります。費用も耐震補強工事に比べると安く済みますので、建ってから日の浅い住宅にお住まいの方は検討されてみると良いでしょう。
一方、古い家の場合は、土台や柱脚などが腐朽している可能性が高くなっていますので、まずこの部分を改修することが大前提となってきます。その上で、壁のバランスと補強ポイントを考慮に入れて、外付けのアンカーボルトを取り付けたり、筋交いを補強するなど、予算に応じた耐震補強工事を行うことをお勧めします。
大地震では余震が何年にも渡って続くこともあります。ですから、何もしないよりは予算内で少しでも耐震改修をしておいた方が安心です。

リフォームついでに耐震改修を

リフォームをお考えなら、そのついでに耐震改修をすることも検討してみてはいかがでしょうか。例えば、内装リフォームでクロスの張替えをするときに、制振ダンパーを取り付けたり、内装建材に耐力壁を用いるなどすれば、少ないコストで耐震工事も兼ねることが出来るのです。また、外壁の張替えなども耐震改修のチャンスです。躯体の状態が悪ければ、同時に耐震工事も行っておいた方が良いでしょう。

建物の腐朽について

土台や柱脚が腐朽する原因として、多くの場合は床下の湿気が原因となっています。古い家の場合、最近の住宅のような防湿コンクリートやべた基礎によって建てられていないため、地下から湿気が上昇して滞留しやすくなります。基礎には換気口が付いていますが、地下水位の高い部分や換気が十分に行えない箇所は床下の土台が湿気で腐りやすくなります。したがって、まず腐朽した箇所を是正し、床下部分に湿気が溜まらないような改修をすることが重要です。

また、壁内は結露によって腐朽します。壁の工事は費用が高くなってしまいますが、対策としては通気層のある外壁に張り替えたり、内部の壁に気流が発生している場合は有効な断熱材に取り替えるなどの方法があります。

屋根の場合は、カラーベストなどの薄い窯業系の屋根材は熱に弱いという特徴があります。屋根の場合は水よりも熱の方が大敵です。屋根の温度は夏場には90度以上に達します。いくらルーフィングを施して雨水の浸入を防いでも、熱による劣化が原因で屋根の下地が痛んでしまうのです。屋根の劣化によって結局は雨水が浸入しやすい状態となってしまいます。カラーベストの屋根で20年以上点検していないような場合は注意が必要です。

1995年に発生した阪神淡路大震災では、家屋の倒壊によって圧死した方の割合が全体の6割以上に達しています。そして、その倒壊した家屋の大半は、土台や柱、壁などが腐朽した古い住宅でした。ですから、地震対策において建物の腐朽を直すことは非常に重要となってくるのです。ご自宅が比較的古い住宅で腐朽が心配という方は、一度床下を点検してみることを推奨します。何もお金を出して業者に点検してもらわなくとも、ご自分で床下に潜って点検するのも一つの方法です。点検でチェックする箇所は土台や柱脚の腐り具合のほか、匂いもチェックすると良いでしょう。木の香りがするようなら問題ありませんが、無臭の場合は柱が腐朽している可能性があります。

また、同時にシロアリの点検も行っておきましょう。束や基礎などに蟻道が確認出来るようならシロアリが発生している可能性があります。蟻道は基礎下から土台にかけての立ち上がりまで進行に5年の歳月を要します。そのため、シロアリの点検は通常は3~4年に一度行えば問題ないとされています。ただし、基礎立ち上がりの内側に断熱を施している住宅は蟻道の進行が早いのでこまめな点検が必要です。しかし、蟻道は断熱材の内側に出来るため、専門家でないと確認は難しいかもしれません。

また、配管からの水漏れがないか点検しておくことも大切です。建物の腐朽の主な原因は、室内から発生する水蒸気、外部から侵入する雨水と水蒸気、そして床下に滞留する湿気です。このような水気は絶え間なく発生し家屋を傷める原因となっています。室内は適度な湿度と温度を保ち、その上で家屋を傷めないような工夫を施すことが求められるのです。そうした環境をリフォームで実現するには難しい面もありますが、決して不可能ではないので専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。

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