遮音性能について
音源となる場所と隣接する部屋や隣家との間を、壁などで遮って音を遮断することを遮音と言います。防音工事を行う際に、どの程度の遮音性能が必要かを判断する基準として、JISが定めた遮音性能(防音性能)の評価方法(JIS A 1419:1992)というものがあります。この評価方法では、空気音に対する遮音等級をD値で評価します。D値は、数値が大きいほど遮音性能が高くなります。
D値(壁の遮音性能を等級別にした値)
以下、日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」から、遮音等級ごとの音の聞こえ方についてご紹介します。
遮音等級と生活実感との対応例
遮音等級 | 大きい音(ピアノ、ステレオなど) | 一般の発生音(テレビ、ラジオ、会話など) | 生活実感 |
D-65 | 通常では聞こえない | 聞こえない | ピアノやステレオが楽しめる |
D-60 | ほとんど聞こえない | 聞こえない | カラオケパーティを行っても問題ない |
D-55 | かすかに聞こえる | 通常では聞こえない | 隣家の気配を感じない |
D-50 | 小さく聞こえる | ほとんど聞こえない | 隣家に気がねすることなく日常生活を送れる |
D-45 | かなり聞こえる | かすかに聞こえる | 隣家の在宅・不在に関わらずあまり気にならない |
D-40 | 曲がはっきり分かる | 小さく聞こえる | 隣家の生活がある程度分かる |
D-35 | よく聞こえる | かなり聞こえる | 隣家の生活がかなり分かる |
D-30 | とてもよく聞こえる | 話の内容が分かる | 隣家の生活行為がよく分かる |
D-25 | うるさい | 内容がはっきり分かる | 隣家の生活行為がとてもよく分かる |
D-20 | かなりうるさい | よく聞こえる | 隣家の行動がすべて分かる |
D-15 | とてもうるさい | 筒抜け | 小さな物音まで分かる |
これによると、一般的な目標値はD-50~D-65程になりますが、ピアノ室の防音工事を行う場合はD60~65程度、ドラム室など低音や振動も発生する部屋の場合はD-65~D-70程度の数値が理想です。また、どの程度の遮音性能が必要かは、建築物の構造や周辺環境によっても変わってきます。例えば集合住宅などでは、戸建の場合よりも高い遮音性能が求められます。
L値(床の衝撃音に対する遮音性能を等級別にした値)
空気音に対する遮音等級はD値で評価しますが、固体音に対する遮音等級はL値で評価します。固体音とは、集合住宅などで上階の床から伝わる衝撃音のことを指しています。L値の場合はD値と異なり、数値が小さいほど遮音性能が高くなるということになります。
床衝撃音遮音等級と生活実感との対応例
※日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」から
遮音等級 | 走り回る音や飛び跳ねる音など | イスの音や物の落下音など | 生活実感 |
L-30 | 通常では聞こえない | 聞こえない | 上階の気配を感じない |
L-35 | かすかに聞こえる程度(遠くから聞こえる感じ) | 通常では聞こえない | 上階の気配を少し感じる |
L-40 | かすかに聞こえる程度(遠くから聞こえる感じ) | ほとんど聞こえない | 上階でかすかに物音がしたり気配を感じるが、気にはならない |
L-45 | あまり気にならない程度に聞こえる | 小さく聞こえる | スプーンの落下音がかすかに聞こえ、大きな動きは分かるようになる |
L-50 | 小さく聞こえる | 聞こえる | 10円玉や100円玉の落下音やイスを引きずる音が分かる |
L-55 | 聞こえる | 発生音が気になる | イスを引きずる音が少し気になる |
L-60 | よく聞こえる | 発生音がかなり気になる | 1円玉の落下音やスリッパで歩く音がよく聞こえる |
L-65 | 発生音がかなり気になる | うるさく感じる | 上階の生活行為がよく分かる |
L-70 | うるさく感じる | かなりうるさく感じる | 大抵の落下音ははっきり聞こえ、素足で歩く音も聞こえる |
L-75 | かなりうるさく感じる | とてもうるさく感じる | 全ての落下音が聞こえ、上階の人の位置まで分かるようになる |
L-80 | うるさくて我慢できない | うるさくて我慢できない | 全ての落下音が聞こえ、上階の人の位置まで分かるようになる |
重量衝撃音(LH値)と軽量衝撃音(LL値)
床に伝わる衝撃音は、さらに2種類に分けられます。1つ目は、子供が飛び跳ねた時などに発生する「重量床衝撃音」で、この値はLH値で評価されます。2つ目は、食器の落下音など軽くて高い衝撃音である「軽量床衝撃音」で、この値はLL値で評価されます。重量床衝撃音は、床のコンクリートが厚く、梁で囲まれた面積が小さいほど遮音性能が優れていることになります。一方、軽量床衝撃音は、床の工法や表面材によって遮音性が変わってきます。フローリングの場合よりも畳やカーペットの方が音は響きにくくなります。なお、防音仕様で造られていない通常のマンションの場合ですと、LH45およびLL50が理想的とされています。
※日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」から
遮音等級 | 重量床衝撃音(LH) | 軽量床衝撃音(LL) |
L-40 | 遠くから聞こえる感じ | ほとんど聞こえない |
L-45 | 意識しない程度に聞こえる | サンダルの歩行音が聞こえる |
L-50 | ほとんど気にならない | ナイフの落下音が聞こえる |
L-55 | 少し気になる | スリッパの歩行音が聞こえる |
L-60 | やや気になる | 箸の落下音が聞こえる |